NO.0073 伊礼智設計室 M邸 東京都杉並区 OMソーラー

POINT

住み慣れたこの街に住み続けたい。そんな思いから家づくりが始まりました。
家にいる時間が増えるこれからを考えると、隣家の迫る住宅街でも、一階で車を見て生活するのではなく、明るく暖かい家で生活したい。そこで二階リビングを計画しました。

設  計 → 伊礼智設計室
建物概要 → 敷地面積 64.13㎡(19.40坪) / 建物延床面積 83.36㎡(25.37坪)
主な仕上 → 外壁:そとん壁(かき落とし仕上げ)一部板貼り 内壁:月桃紙・薩摩中霧島壁 床:赤松
営業担当 → 佐々木
完成 → 2004年9月

外観

玄関

吹き抜け

リビングダイニング

ロフト

浴室

ハウスメーカーしか知らなかった私たち

OMソーラーは新聞広告で、そういうものがあることを知りました。家を作るかどうか、まだハッキリ決まっていない頃だったのですが、『面白いもったいない』などの言葉に、なんとなく琴線に触れるものがあり、資料請求をしてみました…ら、たくさんの工務店からの資料が山のように送りつけられてきました。『工務店』というところで家を作るという発想もその時が初めてでした。TVコマーシャルで流れるハウスメーカーしか知らなかったのです。

資料の山の中からバスツアーで家を見学させてくれる工務店を選び、後学のために二人ででかけました。「百読」は一見にしかずで、OMソーラーシステムの家とはどんなものかがわかり、普通の家とはなんだか生活そのものイメージも変わってしまうような不思議な印象を受けたのをはっきり覚えています。

結局当時住んでいた場所は神奈川で家を建てるのは東京という事情から、改めて東京圏の工務店さんにホームページ経由で何社か資料請求をしたところ、レスポンスの良い返事を送ってくださった相羽建設の佐々木さんと知り合うことができたのでした。

佐々木さんはOMでの家作りに、営業さんというより、現場のもの作りをしている方のような情熱を持っている人で、クルマの運転中にもかかわらずリアシートの私たちを何度も振り返っては熱く語ってくれるその姿に「ここしかないかも!」と心を決めました。実際面倒な相談にもいろいろのっていただき、心強かったです。

建築家・伊礼さんとの出会い

『建築家に設計を依頼』するというのは一部のお金持ちのすることだと思っていたので、最初は全く考えていませんでした。
ただ、相羽さんで伊礼智さんの講演会があると聞き、勉強のためにと出席しました。生きた建築家を見たのは二人とも初めてでしたが、特に『伊礼智さんを見たい』と思ったのには理由がありました。

他の工務店さんのバス見学会でOMソーラーの家を体験した時の3軒のうち2軒が伊礼さんの家だったのですが、それは実に驚きの体験でした。今まで訪れた誰の家とも違う空間がありました。
たんにOMだからということではなくて、そこには大げさにいうと哲学のようなものが感じられました。それに住む人 ( 丹沢の自然を愛する人や、玄人はだしの家具を作るようなすごい施主の方ばかりでした ) が共鳴して、くつろぎと静けさと温かみのある家、他の誰でもないその方たちだけの『家』があることに驚いたのです。

プロフィールの写真を見ると繊細そうで、「私たちの趣味が悪いとケーベツされるんじゃないかしら?すごく高いかな?素敵に住みこなせなかったらどうしよう?何より分不相応かなぁ???」などなどいろんな不安がありましたが、その不安よりも『一生に ( 多分 ) 二度ない家造り、話だけでも聞いてみないと後悔しそう!』と思うほど、他に相羽さんの見学会でも見た伊礼さんの家に魅かれていたのだと思います。

実際に話を伺ってみれば、気さくな方で、こちらの話をとてもよく聞いてもらえました。

もちろんプロとしての鋭い意見とさまざまなアイデアも出していただき、予算的なことも常に視野に入れながら話し合うことができました。思いきってお願いして本当に良かったと思っています。

同居、限られた空間・・・新しい家への不安

夫の父との同居のために今までの夫の古い実家を建て替えることになった私たち夫婦にとって、なんといっても

1. 2軒分の荷物が果たして収まるのか!?

2. 夫の父との同居、ツマの安らぎの場所はあるのか?

ということが心配でした。

某銀行のローン担当者に「えっ!建坪10坪ですか?本当にそれだけ?そこにお住まいで?いや狭い、狭いですねえ!」と失礼極まりない発言を浴びせられたプランです。本当に心配でした。 ( 『犬小屋を建てたくてローンの相談に来たんじゃないんです!』と抗議し、もちろん他で借りました。 )

結婚して10年でたまった荷物、夫の趣味のガラクタ ( ビール作りキットにスキー板、たま~~にやる健康器具、モロモロのカタログの山など ) や、妻の仕事道具 ( パソコンの周辺機器、捨てられないCD-ROMやぶ厚い手引書 ) に、夫の実家の数十年をかけて築かれた物の山が加わるのです。

同居に関しても不安でした。夫は『風通しのいい家族の気配が感じられる』家を望み、妻は『自分のプライバシーが確保できる間取り』という全く正反対の方向に希望があったわけです。この小さな家で、しかも希望がかみ合わない中でどのような家ができるのか、自分たちだけでは結論が出なかったと思います。

また、家がほぼできあがってから、新しい希望の我が家を見に来た時、想像していた以上に家が狭く感じられて本当に悲しくなった事がありました。間違った選択はしていなかったはずなのに、部屋も狭い、天井も低くて圧迫感がある、本当にベッドやテーブルが入るのか、倉庫に預けてある荷物が入るのか・・?人生で一番夢多いはずの時期に、前途を悲観して ( ? ) 眠れなかったことがありました。

不安は解消されたのか!?

実際に入れてみたら、荷物はほぼスムーズに入りました ( 笑 ) 。
また『家が狭い』事でかなり物の取捨選択を厳しくし、本当に自分たちに必要なものは何かを見つめなおすきっかけになったと思います。

実はまだ家の整理は完全についていませんので『私たちはこうでした』というのにはちょっと早いかもしれません。ただ最初感じていた狭さからくる圧迫感は多分に心理的なものが大きかったのか、生活のペースが整ってきた今は、天井の低さもかえって落ち着く感じですし、 180 × 90cm もの大きなテーブルもきちんと収まって家族の団欒の場所となり、木の香りのする浴室や、洗面所、収納の多い台所などむしろ広々と使いやすく快適です。
かえって掃除する時など、「あ~これ以上広くなくて助かった。広い家って掃除が本当に大変なんだろうなぁ」と思うほどです。まぁこれは家事が苦手なせいでの特殊な感想だとは思いますが・・・。

こんな風に、狭くても居心地が良いと感じるのは、私たちが涙ながらに物を捨てたためもありますが、部屋の眺めをよくしてくれる木の柱や霧島壁、足に触れる無垢の板の感触、広い開口部の窓、色や素材の統一、風の通る構造、などなどさまざまな要素が組み合わさっているのだと思います。

もちろん全てオッケーということはなく、まだ直していただきたい部分もありますし、ツマはやっぱりトイレの床はタイルの方が良かったなと思ったり、オットはロフト部分の天井の梁に想像以上の回数で頭を打ちつけては、うずくまってうめいています。それ以外に、何年も住んでみないとわからないことはいっぱいあるでしょうが、本物の素材を使ったこの家に愛着を持って暮らしていけば、伊礼さんの哲学と共鳴できる、自分たちならではの味わいのある家ができるのかなぁと楽しみにしています。素敵に住みこなせるかはともかくですが・・・。

間取り

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